特集
小さな創造都市マイニンゲン その魅力
2006.5.10
(2006年3月までラブリーホールHPで掲載されたものを再掲)
マイニンゲンは、文豪ゲーテ、シラーや、宗教改革で有名なルターが活躍したテューリンゲン州にある、人口2万人あまりの小さな街です。
日本人にとってドイツといえば、ベルリン、ハンブルク、ミュンヘンといった大きな都市や、あるいはローデンブルク、ローレライといった、ロマンチック街道やライン川沿いの小さな街や名所が有名ですが、テューリンゲン州やマイニンゲンは旧東ドイツ領に属していたこともあって、日本人にはあまりなじみがないかもしれません。
けれどもこうした地域には、日本人やいわゆる旧西側諸国の観光客にまだあまり知られていないために、その歴史文化、街並みがよく残されてきた街がいくつかあります。マイニンゲンはその中の一つです。
マイニンゲンの魅力は、①劇場、②街並み、③人々、から作り上げられています。一つひとつ簡単に説明していきましょう。
①劇場(マイニンゲン劇場) |
ザクセン・マイニンゲン公ゲオルク二世によって設立されたマイニンゲン劇場・劇団は、専門家の間では「マイニンゲン・スタイル(Meininger
Spielweise)」という新たなスタイルを生み出した場所として知られています。マイニンゲン劇団は、その斬新なスタイルでヨーロッパ中の注目を集め、各地を巡業公演してマイニンゲンの名前を広めました。またオペラやコンサートでは、有名な音楽家や識者に指揮を委ねることによってその芸術活動の質をあげていきました。
19世紀に建設され一度建て替えられた現在の劇場は、1909年にオープンしたものです。約730席以上という規模は、ドイツの小都市にあるものとしては例外的に大きなものですが、オペラやコンサートをはじめとする各種の公演は、街の周辺だけでなく州内、またヨーロッパ中から集まる人々によって、いつも盛況となっています。特に毎年6月に行われるオペラ祭りでは様々な催しが行われ、街全体がアートの雰囲気に包まれます。
またマイニンゲンは、若手芸術家のための研鑽(けんさん)の場ともなっています。大都市の劇場と違い、オペラ、コンサート、コーラス、人形劇などの公演グループ(劇団・オーケストラ・合唱団など)が一劇場に集まる美しい小都市マイニンゲンで、将来の大劇場での主役を夢見る若手団員は互いに切磋琢磨し刺激し合い、その芸術的才能を磨いていくのです。
②街並み(都心部の伝統的建造物群) |
劇場と並んでマイニンゲンを特徴づけるものが、旧市街を中心とした伝統的な街並みです。ドイツは伝統的な木組みの家(Fachwerkhaus)が多いことで有名ですが、マイニンゲンでは、街の中心にある教会広場と表通りを中心にその歴史的な街並みが現在まで見事に守られ、住む人、訪れる人を魅了し続けています。
驚かされるのはその外見だけではありません。伝統的なファサードを守りつつも手入れには抜かりがなく、また配線など内部設備においては常に進化し続け、現代的な生活にも完全に対応したものとなっています。街のホテル、レストランや雑貨屋さん、はては携帯電話ショップに至るまで、多くの店が木組みの家を初めとした時代時代の建築様式の建物の中で営業しています。歴史的な建物の中で人々が普通に生活し働くことによって、古い街のまま完全に残すよりも、むしろ一層魅力ある街となっているのです。
東西ドイツの分裂によって共産主義国家に組み入れられていた旧東ドイツの街は、西側諸国のような急激な開発を回避することはできましたが、政府の財政難などによって歴史的な街並みのメインテナンスがしっかりと行われてきませんでした。イデオロギー的にも、歴史的な建物や宗教的施設は忌避(きひ)される傾向にありました。その中で、マイニンゲンの街並みは、この地域の歴史と伝統を伝える貴重な遺産になっているのです。
③人々(魅力を支える町民と町役場) |
日本でも最近、文化活動を盛り上げようという市民の取り組みが各地で話題になり、また歴史的な街の散策もはやり始めています。ドイツはそんな日本の街の最近の取り組みの見本としてよく取り上げられますが、特にマイニンゲンでは、こうした劇場や街並みの魅力を、市民が守ってきたという伝統があります。
マイニンゲン劇場は、マイニンゲンの団体(マイニンゲン文化財団)が、州などの財政的支援をもらいながら博物館と一緒に運営しており、ゲマインデと呼ばれる町役場がその運営に大きな役割を果たしています。またファンクラブ(マイニンゲン劇場愛好家協会)が財団とは別に組織されて劇場や劇団に設備やサービスを提供していますが、こちらはマイニンゲンの町民だけでなく、マイニンゲン劇場を愛する他の街の市民も多く加わり、マイニンゲンの芸術活動を長く見守っています。
一方、歴史的な街並みは、町民全体の気持ちが最も強く反映されるものです。建て替えよりも費用が高いといわれる歴史的な建物の保存・修復費用については、州などの財政的支援を得ながらも、一部は町民自身が工面し日々の手入れを欠かさないことによって補われています。また町役場は、街並みにそぐわない看板や高層の建物が建てられないよう、建て替えや補修による景観への影響を専門家とともに議論し、家主と話し合いを持つなど、常に歴史的な景観を守る取り組みを行っています。
そんな人達も、普段は散歩好きの普通のドイツ人。マイニンゲンの地ビールを片手に、ドイツでも最もおいしいと言われるテューリンゲン・ソーセージ(Thuringer
Wurst)をほおばる姿は街のどこでも見られるでしょう。アルコール度がちょっと高いボックビールでほろ酔い気分の人を見かけたら、ちょっと話しかけてみては?。日本人観光客の多いドイツでも、ここならまだちょっとめずらしがってもらえますよ。
さあ、みなさんもこんなすばらしいマイニンゲンを訪れてみませんか?■
【関連リンク】
2006年3月の両市町の交流事業 河内長野市ラブリーホールとドイツ・マイニンゲン町との交流
<ドイツ語>ドイツ・マイニンゲン町 http://www.meiningen.de/